W800
名車の血統を受け継ぐWブランドの歴史
W800は、カワサキが1966年に発売した名車「W1」の血統を色濃く受け継ぐ、クラシックモーターサイクルの代表格です。Wシリーズのルーツは、さらに歴史を遡るメグロの大型バイク技術にまで行き着きます。1999年に登場したW650を経て、2011年にフューエルインジェクション化されるとともにW800へと進化を遂げました。
厳格化する排出ガス規制の波を幾度も乗り越えながら、空冷バーチカルツインという伝統的なエンジンレイアウトを頑なに守り続けています。この変わらない姿勢こそが、長きにわたり多くのファンから愛され続ける最大の理由といえるでしょう。
最新の環境性能に適合させつつ、昔ながらのバイクらしさを現代のライダーに伝える役割を担っており、単なる移動手段を超えた歴史的な価値を内包する特別な1台として位置づけられています。
金属の質感を活かしたクラシックな外観
W800の外観において最も目を引くのは、プラスチック部品を極力排除し、金属ならではの重厚感を前面に押し出したクラシカルなデザインです。クロームメッキが眩しい前後スチールフェンダーをはじめ、美しい曲線を描くティアドロップ型のフューエルタンク、そして細身のダブルクレードルフレームが、往年の名車を思わせる流麗なプロポーションを形成しています。
また、エンジンの造形美にも並々ならぬこだわりが詰め込まれています。空冷エンジン特有の深く刻まれた冷却フィンや、シリンダーの右側に配置されたベベルギアのカバーは、機械としての美しさを強く主張します。
足元には大径のワイヤースポークホイールが採用されており、クラシカルな雰囲気を足元から引き立てる仕上がりです。メッキパーツの輝きと丁寧な塗装仕上げは、ガレージに置いているだけでも所有欲を満たしてくれる芸術品のような存在感を放ちます。
独特の鼓動感と重厚なエキゾーストノート
W800に搭載されている773ccの空冷4ストロークSOHC並列2気筒エンジンは、最高出力38kW(52PS)を6500rpmで発揮します。特筆すべきは、現代のバイクでは珍しくなった360度クランクを採用している点です。左右のピストンが同時に上下するこの機構により、等間隔の爆発が生み出され、力強い鼓動感と味わい深いエンジンフィーリングを実現しています。
アイドリング時にはドコドコというリズミカルな脈動が車体を揺らし、スロットルを開ければ左右二本出しのキャブトンタイプマフラーから、低音の効いた重厚なエキゾーストノートが響き渡ります。
さらに、カムシャフトを駆動するベベルギアが奏でる独自のメカニカルノイズも、W800ならではの魅力的なサウンドの一部となっています。絶対的なスピードや加速性能を競うのではなく、エンジンの鼓動と対話しながら、風を切ってのんびりと走る喜びに特化したセッティングが施されています。
